警察官などをかたり、高齢者のキャッシュカードを入れた封筒を偽物とすり替える「カードすり替え詐欺盗」。最近、急増しているこの犯罪の手口の一端が、警察が押収したマニュアルから明らかになった。

「○○警察△△の件で伺いました。●●と申します」
《自分で封筒を持って自分でカードを入れる》。セリフや行動を細かく指示する内容からは、犯行に不慣れなアルバイト感覚の少年らを手足に使う組織の特性が見て取れる。

 ■偽の封筒とすり替え

 7月下旬、大阪府東大阪市内の路上。府警の捜査員が、80代女性からキャッシュカードをだまし取ろうとした詐欺未遂容疑で、住所不定の無職女(21)を逮捕した。女は特殊詐欺グループの一員で、被害者からカードを受け取る「受け子」。このグループの手口がカードのすり替え詐欺盗だった。

 手口はこうだ。まず、警察官や銀行協会員を名乗る人物が高齢者宅に「あなたのキャッシュカードが偽造された可能性がある」などと嘘の電話をかける。その上で受け子が自宅を訪問。高齢者にカードと暗証番号を書いたメモを持参した封筒に入れさせ、封をして保管するよう指示する。

 受け子はこの作業の過程で、事前に用意していたポイントカードなどが入った偽の封筒とすり替え、高齢者のカードを入手。偽の封筒が手元に残ることから、高齢者は被害に気付くのが遅れ、この間に詐欺グループはカードの限度額まで現金を引き出してしまう。

 ■一定時間で消えるメッセージ

 

すり替えの手順について

 府警が押収した女のスマートフォン内には、こんなタイトルのSNSのメッセージが残っていた。原文のまま紹介する。

 (1)○○警察△△の件で伺いました。●●と申します。封入作業の件で伺いました。

 (2)早速ですが、封入作業を行わせて頂きます。

 ・カラの封筒を出す   ・カードをお願いします(お客様がカードを持ってくる)

 【作業手順】

 ・自分で封筒を持って

 ・自分でお客様のカードを入れる

 「今入れますからねー」

 「はい!全部で○枚、入れましたよ!」

 ・ノリをつける

 「じゃあノリつけますねー!」

 「はい!つけました!」

 (間髪を入れずに)

 ※「あ、○○さん。銀行印持ってきてください!」

 ※印鑑を取りにいかせる。

 (封筒をキープしたまま隙をつくる)

 マニュアルでは、被害者宅を訪れたときからの言動を詳細に指示していた。特に、封筒をのり付けした直後に被害者に印鑑を取りに行かせ、その隙に偽の封筒とすり替える場面には※印をつけ、犯行の重要部分であることを示している。

 メッセージは一定の時間で消えるように設定されており、グループは証拠隠滅を図ったとみられる。

 ■マニュアルは「受け子」向け

 警察庁によると、今年1~6月の特殊詐欺被害8025件のうち、カードすり替えの手口は1393件。前年同期比の2倍を超え、全体の約17%を占めた。

 捜査関係者によると、同様のメッセージは他県でも押収されているといい、カードすり替え被害が急増する背景には、こうしたマニュアルの拡散も影響しているとみられる。

 このマニュアルは受け子向けで、詐欺グループの実態をまったく知らなかったり、犯行に慣れなかったりする若者が読むこともある。捜査関係者は「やり取りの中でぼろが出ないように余計なことは省き、やるべきことのみを並べているのではないか」とみる。

 そのうえで、電話のかけ役らには、専門用語を使わせるなど、被害者を信用させるためのさらに詳細なマニュアルが用意されている可能性を指摘。「詐欺グループは被害者の想像以上に組織だっており、周到に準備している。そのことを知っておいてもらいたい」と呼びかけている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190828-00000501-san-soci


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