韓国の公共放送「韓国の領土“独島記念硬貨”タンザニアが発行」
「なんでタンザニア?」という言葉が頭に浮かんだ。
9月16日、韓国の公共放送KBSが下記のニュースを報じた。

「独島が『韓国の領土』と表記された硬貨がタンザニアで今年7月に発行され、韓国の国内外で販売されている」

韓国が独島として不法占拠している島根県の竹島について、遠いアフリカのタンザニアが『DOKDO』『THE LAND OF KOREA』という英文が記された硬貨を発行したというのだ。額面は3000シリング(日本円で約140円)。タンザニアに行けば、実際に使用できる硬貨との触れ込みだ。

韓国KBSの報道では貨幣収集家の男性がインタビューで「韓国も独島硬貨を積極的に検討すべきだ」と力説する。この脈絡から判断するに『タンザニアも韓国領だと認めた独島を、より国際社会に知らせる手段として韓国も独島硬貨を導入しよう』ということを伝えたいのだろう。

ただ何か怪しい。そもそもなぜタンザニアが竹島を韓国領だと記した硬貨を発行したのだろうか。その経緯については報道では全く触れていないのだ。

菅官房長官は完全否定「発行した事実はない」
菅官房長官は放送翌日(9月17日)の会見で報道について言及した。

「在タンザニアの日本大使館から直ちにタンザニア外務省に事実関係を確認したところ、先方からは、中央銀行含めタンザニア政府としてそのような記念コインを発行した事実はない。このように回答がありました。」

菅官房長官はKBSの報道を完全否定したのだ。ますます怪しさを増す「タンザニア独島硬貨」…。その“正体”を暴くため、私たちは、まず韓国国内で独島硬貨を販売しているソウルのコインショップに向かった。

独島硬貨を製作したのは「ヨーロッパの会社」
韓国・ソウルの繁華街にあるビルの一室にその店はある。独島硬貨はすでに売り切れていたが、サンプルとして1つだけ保管されていて、実物を見る事が出来た。

手に取ってみて驚いた。大きい。そして重い。サイズは手のひらにギリギリ納まる直径65ミリ、重さ155.5g。純度99.9%の銀製で、表面には竹島が正確かつ立体的に再現されている。「韓国領」と刻まれた岩が置かれている場所には、ご丁寧にクリスタルが輝く。裏側には「TANZANIA」「3000SHILLING」の文字と紋章が描かれている。価格は49万5000ウォン、日本円で約4万5000円と高額だ。

コインショップの担当者はカメラ撮影NGという条件付きで取材に応じてくれた。

「私たちの会社はあくまでも硬貨を販売するだけ。独島硬貨を製作したのはヨーロッパの硬貨製造会社だ」

「タンザニア独島硬貨」は、何とアフリカではなくヨーロッパで作られたという。担当者は2018年11月、この「ヨーロッパの会社」から、こんなことを持ちかけられたというのだ。

「米朝首脳会談、南北首脳会談が開催された。文在寅大統領も白頭山(ペクトゥサン・中朝境界の山)に行った(2018年9月)。金正恩委員長が漢拏山(ハルラサン・韓国の最高峰の山)に来るという話もある。その2つの山に加えて独島の硬貨も作るのだが、韓国で販売しないか?」

コインショップ側はこの提案に乗り、全発行数777枚のうち250枚余りを引き受け、韓国で販売したという。ただ、このヨーロッパの会社自体が独島硬貨を企画したのか、それとも別の誰かから発注を受けたのかは知らないと話す。

どうやら真相のカギを握るのは「ヨーロッパの会社」のようだ。その会社の情報を何とか引き出そうとしたが、結局国名すら教えてくれなかった。

会社の所在地は「リヒテンシュタイン」だった
その後の私たちの調査の結果、「ヨーロッパの会社」はオーストリアとスイスの間に位置する「リヒテンシュタイン」にある硬貨製造会社であることが分かった。

早速、独島硬貨の真相を聞くため、コンタクトを試みた。担当者は会議中ということで、直接話すことはできなかったが、1通のメールが送られてきた。

「(独島硬貨は)タンザニア銀行によって正式に認可された硬貨です。現在、タンザニア銀行とこの件について調査しており、調査後にプレスリリースを出します」

独島硬貨はタンザニアの中央銀行であるタンザニア銀行によって「正式に認可を受け」製造したものだと主張している。

コインに詳しい関係者によると、コレクター向けの記念硬貨を製造する会社はヨーロッパを中心に複数ある。これらの会社はタンザニア、パラオ、クック諸島などから硬貨発行の認可を受け、自社企画や外部からの発注を受けて記念硬貨を作るのだ。一方、認可を出す国は、認可料や国の広報を目的にしているという。

調べてみると、サンリオの人気キャラクター、キティちゃんの記念硬貨がクック諸島の硬貨として何種類も製造されていて、こうした記念硬貨がそれほど珍しいものではない事が分かった。

タンザニア銀行が“驚きの発表”
最後にタンザニア銀行にコンタクトを試みた。なかなか電話がつながらないため、問い合わせのメールを送り返信を待っていたところ、突如、9月18日付で以下の発表文を公表した。

「ソーシャルメディアで、2019年7月にタンザニア銀行が表側に独島を、裏側にタンザニアの紋章を描いた記念硬貨を発行したという噂が流れていますが、これは悪意のある噂で、根拠のないものであるということをはっきりさせて頂きたく存じます。また、そのような硬貨を造る会社とも一切契約していません」

なんと「悪意のある噂」との表現で、独島硬貨には一切関わっていないと断言したのだ。タンザニア銀行が認可を出したとするリヒテンシュタインの硬貨製造会社の主張とはまるで正反対だ。

タンザニア銀行の発表が正しいなら、「タンザニアが独島硬貨を発行した」との韓国KBSの報道は明らかな誤報と言わざるを得ない。結局、誰のどんな意図によって独島硬貨が製作されたのかは明らかになっていないが、少なくともタンザニアが竹島を韓国領だと認めたという事実はなさそうだ。

タンザニア銀行の発表について、再びリヒテンシュタインの硬貨製造会社に取材を申し入れているが、現時点で回答は届いていない。(9月19日時点)

疑惑の「独島硬貨」を報道してしまう韓国メディア
日韓関係はいわゆる徴用工問題や慰安婦問題などで悪化の一途をたどっている。日本が韓国を輸出管理上の最優遇対象国から除外した措置への対抗として、8月31日には韓国の国会議員6人が竹島に上陸した。韓国側の挑発によって関係悪化に拍車がかかっていて、韓国メディアによる日本批判はもはや日常の光景となった。

こうした“日本たたき”の流れの中で、公共放送ですら正体の知れない「タンザニア独島硬貨」に飛びつき報道してしまうというのが、現在の韓国内の実状と言えるだろう。

なおタンザニア銀行の発表を受けて韓国KBSにもコメントを求めているが、いまのところ返答はない(9月19日時点)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190919-00010013-fnnprimev-kr&p=2


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