韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が日本時間の28日夕方5時ごろ、東部の咸鏡南道・連浦付近から日本海に向けて飛翔体2発を発射したと発表した。河野防衛大臣は、飛翔体は弾道ミサイルで高さは約100キロ、飛行距離は約380キロだったと明らかにしている。飛翔体の発射は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の維持の発表後初めて。

飯田)落下したのは日本の排他的経済水域(EEZ)の外でした。29日付の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、金正恩委員長が国防科学院で行われた、超大型多連装ロケット砲の試射を視察したと報道しました。今回の弾道ミサイルの発射を指すと見られています。北朝鮮がまた、という感じですか。

宮家)こういう話になると、日本のマスコミからいつも「どういう意図があるのか?」と聞かれるのですが、北朝鮮のミサイルは花火ではないのです。ミサイルは花火のように、記念日のお祝いで撃つわけではありません。大事なことは、北朝鮮にとってアメリカと約束したのは2つだけ。「ICBMを撃たない、核実験をやらない」ということだけです。つまり、それ以外の兵器はすべて開発可能だということです。北朝鮮のミサイル発射は今年(2019年)で13回目と言われるけれど、それは記念日を13回やっているわけではなくて、彼らは周到にアメリカと話を付けた上で、いま研究段階、試作段階にある兵器を、最終的な配備に向けて試射しているのです。それだけのことなので、GSOMIAがあろうがなかろうが、北朝鮮はミサイル開発を続けるのです。だからあまり深読みしても意味がないと思っています

ミサイル発射は韓国に対するメッセージ

宮家)2つ目に、日本政府が「弾道ミサイル」だと言っているのは、国連決議違反だと言っているのだと思いますし、それはその通りです。ただ、EEZに落ちたか落ちないかということよりも、この距離や高さから考えると、日本を狙うというよりは、標的は朝鮮半島の南部、韓国軍と在韓米軍なのです。しかし米軍は、ソウルからやや南下した場所に基地を移しました。そこも射程距離に入るのだということを言いたいのではないかと思います。今回の発射がどこに対するメッセージかと聞かれれば、間違いなく韓国に対するメッセージですよ。

トランプ大統領にとって北朝鮮の優先順位は低い

宮家)北朝鮮は核兵器を廃棄する気なんてないのです。金正恩さんは「年末までアメリカの勇断を待つ」と言っていますが、待ってもいまの状況では動きません。アメリカが事務レベルで北朝鮮と協議をしたって、北朝鮮側は「おたくの大統領と直接話せるのだから、お前なんかとは話さない」となる、足元を見られているから何も動きません。一方でトランプさんにしたら、金正恩さんと会ったとしても、それが大統領選挙の票になると思いますか? なるわけがないでしょう。アメリカ人のなかには「金正恩って誰?」という人がいくらでもいるのですから。そうなると、大統領選挙の予備選が始まってしまったら、トランプさんは北朝鮮のことをかまっている暇はありません。金正恩さんに会いに外国に行って、その間に国内政治で何が起きるかわからないわけですから。いまのトランプさんにとって、北朝鮮問題は優先順位が高くない。中国の貿易問題の方が票になりますからね。

飯田)しかし、それで何もせずに時間が過ぎるとなると、より技術が蓄積して行くことになりますよね。

宮家)そうです。何の制限もなく、核実験とICBM以外の北朝鮮の兵器は、確実に実戦配備に向けて動き出して行くということです。それはもちろんいいことではないのだけれども、どれもこれも、トランプさんが金正恩さんと会うからいけないのです。

飯田)結局それが。

宮家)北朝鮮に核開発をやめさせるためには、シンガポールでアメリカが北朝鮮に相当な圧力をかけるべきだったのです。しかし、中途半端な圧力で終わってしまっているではないですか。最大限の圧力だとか、検証可能で不可逆的な非核化などと言っているけれど、アメリカはそれをまったくやっていない。そのツケが回って来たということだと思います。

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