広範囲に徹底的な検査を行った韓国に対し、検査対象者を絞っている日本。新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、どちらの手法が効果的なのか──米紙「ワシントン・ポスト」が“2つのライバル国”を比較している。

日本は限られたリソースを賢く活用?

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、東アジアの2つのライバル国が全く異なる対応をしている。大規模検査を実施する韓国に対し、対象者を絞って検査する日本だ。

ウイルス封じ込め策として、どちらが有効なのか──アメリカをはじめ世界各国が注目する議論である。

韓国は迅速かつ広範囲に検査を実施したことで、世界的な称賛を浴びた。3月29日発表のデータでは、累計39万4000人以上が検査を受け、感染が確認されたのは9583人となっている。

一方、韓国の人口の2倍以上、1億2700万人を抱える日本では、約2万8000人が検査を受け、感染者は1724人となっている(3月28日時点)。

日本では数週間ほど前からこんな議論が巻き起こっている。

韓国より感染者数が少ないのは、単に日本の検査実施数が少ないからなのか? 日本政府は限られたリソースを賢明に使っているのか、それとも直視したくない現実から目をそらしているだけなのか?

日本の公式集計は実態を反映しているのか

いまの米政府がそうであるように、日本政府は流行発生の初期段階で検査能力の不足が批判された。それ以降、検査態勢は拡大されたが、医師が保健所に検査を依頼しても断られた事例が290件もあったという日本医師会の調査結果も報告されている。

日本政府の指針では、疑いのある症状が出ても発熱が4日以上続かない限り、病院へ行くべきではないとしている(高齢者は除く)。また、診察した医師からの依頼がなければ、検査を受けることができない。

その結果として、日本の公式集計が、実際の感染者数よりもかなり低い数字になっている可能性がある。

しかし、この検査手法を支持する向きは、これで限られたリソースを重症患者に集中させることができ、死者数も低く抑えられていると話す。「重症でない人は病院に行くべきではない」と語るのは、政府対策本部の専門家会議メンバーの押谷仁・東北大学教授だ。

押谷によれば、特に若い人には症状がなく、感染者をすべて特定するのは不可能であり、それなら重症者に集中して、軽症の人には自宅待機を呼びかけるべきだという。

検査を求める人々で混雑した病院の待合室では、感染していない人が感染のリスクにさらされる危険性もあると、押谷は指摘する。

日本はアメリカの「実験の場」

アメリカでは、検査能力が徐々に拡大し、3月28日までに89万4000人の検査が行われた。だが同時に、政府が発するメッセージに変化がみられる。「症状が軽いなら検査は不要、家にいなさい」という感じにシフトしているのだ。

検査キットだけでなく、検体を採取する医療従事者が使うマスクやガウンなどの防護具も不足している。軽症の人の検査で防護具が使い尽くされてしまっては、医師や看護師が感染するリスクも高まり、彼らが感染すれば重症患者のケアが充分にできなくなる。

マイク・ペンス副大統領は3月初め、医師の指示があれば「すべてのアメリカ人が検査を受けられる」と述べていたが、先週ぐらいからその発言が変わってきている。

「検査について言うと、医師を必要としているのは健康な人ではなく病気の人です。ゆえに、症状がないのなら検査を受ける必要はありません。そのルールを守ることで、検査のリソースを症状が出ている人々が利用できるようにしてほしい」

そうした方針の「実験の場」となっているのが日本だ。

見方によっては、日本は成功例と言えるだろう。日本は今のところ、韓国や欧州、アメリカを襲ったような感染者の爆発的な急増には至っていない。医療システムも現状ではパンクすることなく機能している。

しかし、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広は、検査数が不足しているせいで政府は感染の広がり具合を把握できていないし、国民に誤った安心感を与えている可能性があると指摘する。

「正確に状況を把握するすべがありません。そのために適切な措置を策定することもできません」

上が言う適切な措置とは、人と人との距離を取り接触機会を減らす「社会距離戦略(social distancing)」などの感染拡大防止のための政策だ。現状では、そうした政策を策定できないし、ましてや強制なんてできるわけがないという。

この指摘には一理ある。3月半ば、東京では人々が花見に集まったり、飲食店が大勢の客で賑わったりしている様子が見られた。政府が緩い方針を取るなか、春の訪れとともに社会距離戦略は破綻した。

「日韓対決の勝敗」を決めるのは…

他方、韓国では政府が民間セクターによる検査を迅速に認可し、医療機関以外で検査できるサイトを何百ヵ所も準備したほか、ドライブスルー形式の検査態勢まで整えた。

「正確な診断によって患者にリスクを伝えることができます。患者はそれに従って予防措置も取れるようになるのです」と、ソウル大学のファン・スンシク教授(公衆衛生)は言う。

軽症の感染者を隔離し、彼らが他の人にうつすのを防ぐために、韓国政府は「治療センター」を400ヵ所に開設。ここで軽症患者の体調をモニタリングし、重症化したら即座に集中治療室に移送できるようにした。

「追跡して治療するというアプローチは、医療システムの重荷になることもあります。ですが、患者に対して情報を伏せておくのは倫理的にも問題ですし、医療的にも効果がありません」と、ファンは指摘する。
結局のところ、日本と韓国、どちらの手法がより効果的なのか、その判断を下すのは、この新型ウイルスだろう。

韓国は流行発生の初期段階で感染者の急増がみられたが、最近はそのペースが急激に落ちている。3月29日の新規感染者数は105人に抑えられ、その2倍以上の人が退院した。

日本はこれまでうまく抑制してきたが、最近は感染者数の大幅な増加傾向がみられる。3月28日には新規感染者数が初めて200人を超えた。

3月26日、日本政府の専門家会議は「蔓延の恐れが高い」と報告。ようやく東京の街から人の姿が消えはじめた。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200331-00000004-courrier-int&p=3

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