渦中の「正義記憶連帯」とは別のもう一つの慰安婦関連団体「太平洋戦争犠牲者遺族会(以下、遺族会)」が6月1日に記者会見を開き、この日、国会議員となった尹美香ユン・ミヒャン)氏の辞任と正義記憶連帯の解体を求めた。 【写真】2017年10月、「水曜デモ」の際の金福童さん(中央)と尹美香  尹美香氏とは、慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(以下、正義記憶連帯。旧・挺対協)の前理事長で、近年、韓国の慰安婦問題を主導してきた人物。5月に行われた韓国の国会議員選挙で与党陣営から立候補し、当選していた。  この日の会見には梁順任(ヤン・スンイム)会長と元慰安婦の遺族2人が出席し、挺対協と尹氏に向かって、「不正の泥沼」「天人共に怒るべき集団」などと猛批判を浴びせた。 ■ 「挺対協は遺族会の功績を横取りした」  遺族会の主張は大きく二つであった。まずは、正義連(挺対協)が自分たちの功績を横取りしたという主張だ。  「91年に自らが慰安婦だったと告白した故金学順氏をはじめ、計35人の原告団が2度も日本へ渡り、韓日協定以来初の対日訴訟を起こした。その時、尹美香氏は所属団体もなく、35人の原告団に名前も入ってなかった。その日以来、尹氏は日本軍慰安婦問題を解決するために先頭に立ちたいと言って、挺対協を作った」  「遺族会の努力で『慰安婦生活安定支援法』が制定され、242人の元慰安婦らが登録した。その名簿を確保した挺対協は、遺族会が提案した慰安婦住居問題の解決も挺対協が主導して作ったと主張するなど、すべての功績を横取りした」  以後、韓国の慰安婦問題をリードするのは、挺対協と尹美香氏になった。

 遺族会が主張したもう1点は、正義連と尹美香議員が、自分たちと意見が違う元慰安婦らを排除してイジメたという主張だ。  「日本側が河野談話後に設立した『アジア女性基金(女性のためのアジア平和国民基金)』が補償案を提示した際、元慰安婦の一部は支援金を受け取ることを望んでいた。しかし挺対協はこれを受けようとする元慰安婦らを『売春』『公娼』という言葉で罵倒した。その後、報償金を受け取った元慰安婦らの名前を南山にある慰安婦記念碑のリストから外すという恐ろしい非行を犯した」 ■ 遺族会を激しく批判してきた挺対協  太平洋戦争犠牲者遺族会とは、太平洋戦争当時、日本によって動員された軍人や強制徴用者、慰安婦らとその家族が1973年に結成した団体だが、慰安婦問題をめぐって正義連(挺対協)と長い間対立してきた。韓国での報道によると、挺対協は日本政府の公式謝罪を最も重視する反面、遺族会は慰安婦被害者に対する経済的な賠償を重視している。あえて分類するなら、挺対協は進歩、遺族会は保守と見る見方もある。  この二つの団体が初めて対立したのは、1995年に日本外務省の主導で設立された「女性のためのアジア平和国民基金」をめぐる攻防だった。アジア女性基金は、1997年から韓国人元慰安婦たちに対して、日本総理の謝罪の手紙とともに1人あたり500万円の補償金の支給を開始した。  しかし、挺対協とアムネスティ韓国支部などの団体がこれに激しく反対した。その影響で韓国では「私設団体の基金で補償をするのは日本が法的責任を回避しようとする狙いだ」との世論が沸騰し、207人の元慰安婦のうち、147人が受領拒否の意思を明らかにした。2007年をもってアジア平和国民基金は解散してしまった。  当時の状況について遺族会は「(挺対協は)基金を受けた7人の女性に対し、売春婦と呼び、日本の右翼よりもひどい暴言を浴びせた。尹氏のことをお婆さんたちはみんな怖がっていた」と主張した。  2013年には、挺対協が遺族会を激しく非難する声明を発表した。「アジア女性基金と天皇を美化する太平洋戦争犠牲者遺族会の歪曲された認識の流布は日本軍慰安婦問題解決と正しい過去史清算をさらに遠ざける」というタイトルの非難声明は、遺族会が安倍政権糾弾記者会見に向けて配布した報道資料の中の表現を問題にした。  「遺族会は記者会見を知らせる報道資料で『(日本)総理の謝罪文を伴った”アジア女性平和基金”は、日本軍隊慰安婦被害者たちに直接慰労金を渡すなど、過去の歴史を平和的解決の第一歩を踏み始め、日本軍隊慰安婦の痛い心の傷を少しでも慰労する一助となった』と言及した。しかし、これはとんでもない。”アジア女性平和基金”、いわゆる国民基金は、日本軍慰安婦被害者たちの傷口を慰労することではなく、日本政府が国家的、法的責任を回避するために推進した目隠し用の弥縫策だった」  「戦後も断絶と疎外の中で貧しい生活を続けてきた被害者の状況を利用し、被害者の『法的賠償権』を『金』の問題に変質させたまま、さらなる葛藤や不信を生んだ国民基金はいかなる理由でも容認してはいけない日本政府の過ちだ。彼らの言う通り、国民基金が被害者たちの傷を癒すものだったとすれば、現在まで日本軍慰安婦被害者らが日本政府を相手に長い闘争を繰り広げる悲劇が継続されることはなかっただろう。むしろ国民基金によって被害者はより長く反復的な人権侵害を受ける結果を生んだ。日本政府と右翼から絶えず人権侵害的妄言を受けながらも最後まで人権と名誉回復を放棄していない日本軍慰安婦被害者の立場を代弁しないどころか、誤った認識を広めている遺族会に中断と反省を促す」

■ 「挺対協の主張=慰安婦の声」ではないことが明白に  2015年の日韓合意についても、遺族会は挺対協と正反対の評価をしている。  正義連(当時は挺対協)は、日韓慰安婦合意直後から「被害者の意思が反映されなかった」とし、合意破棄を主張した。2017年に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は外交部傘下に設置された慰安婦合意タスクフォースの調査活動を通じて「2015年の慰安婦合意が被害者中心主義に反する」という結論を下した。合意破棄を宣言しなかったが、和解と癒しの財団を解散させた。  しかし、この日の記者会見で、遺族会が伝えた元慰安婦らの立場は、挺対協と文在寅政府の主張と違った。  記者会見で梁順任会長は、2015年韓日慰安婦の合意について「元慰安婦らは生きている間、完全な謝罪を受けるのが難しければ、補償でも受けられることを望んでいた。しかし正義連の反対で和解・癒し財団も結局解散した。(合意が)100%満足できるわけではないが、(和解・癒し財団の解散は)被害者らの切ない状況に背を向けたものだ」と主張した。  相次ぐ遺族会や元慰安婦の李容秀さんの暴露によって、韓国社会では「挺対協の主張=慰安婦被害者たちの声」という幻想が壊れてしまった。被害者中心主義を掲げてきた文在寅政権の苦心が深まっていく。

李 正宣

https://news.yahoo.co.jp/articles/d41f3291c8a7b77404bb12c030a86877741ee659?page=2

JBpress

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