日本産サツマイモが新たな火種

韓国で日本のサツマイモが無断で栽培されている実態が明らかになった。日本品種のイチゴやブドウなどの無断栽培が以前から問題となっているが、国際法上は合法だ。日本も迅速に対応し、衆議院で新しい品種の持ち出しを制限する種苗法改正案が可決し、参院に送られた。 【写真】「少女時代」のソヒョンも

 韓国のサツマイモは、江戸時代に朝鮮通信使が持ち込んだといわれている。  チャプチェタッカルビなどの韓国料理に加えて、サツマイモをトッピングしたピザも人気で、あるピザ店はサツマイモピザが3分の1を占めるという。  また、サツマイモケーキやサツマイモラテが売られている。

 K-POPアイドルグループ「少女時代」や2017年に解散した「miss A」のメンバーが火付け役となったサツマイモダイエットが注目を浴び、乳製品メーカーの「ビンクレ」は今月18日、サツマイモを原料に加えたヨーグルトの販売を開始した。  差し当たって日本式焼き芋が人気だが、ブームを牽引する「蜂蜜サツマイモ」は日本の農研機構が開発した「べにはるか」だと判明。  2010年に登録された品種で、九州や関東の産地を中心に普及し、ブランド化が進んでいる。  背景には、韓国の農業関係者が日本の産地を視察した際、種芋を無断で持ち帰って流出したことがあるようだ。

 2015年ごろから韓国内で栽培が始まり、公共機関の地方技術センターが培養を進めて安価な苗を提供し、短期間で拡大。  18年には韓国のサツマイモ栽培面積の4割に達した。  いま日本のサツマイモは、アジアやカナダなどでも人気があり、直近10年間の輸出額が10倍以上に膨らんだ。

 一方、韓国も日本品種のサツマイモの輸出をはじめており、日本の輸出が影響を受けると産地の関係者は懸念するが、国際法上、違法性を問うことは難しく、栽培の差し止めや損害賠償請求はできないのが現状だ。

日本品種を交配したイチゴ

 2018年、平昌冬季五輪で銅メダルを獲得したカーリング日本代表チームの選手が試合後の記者会見で「イチゴがおいしかった」と話し、韓国における日本の農産物の無断栽培が注目を浴びた。  17年時点の韓国イチゴ市場は90%以上が“国産”で、レッドパールと章姫を交配させた「雪香(ソルヒャン)」が83・6%、章姫と栃の峰を交配させた「梅香(メヒャン)」が3・3%を占めている。  日本産イチゴの流出は90年代に始まった。  なかでも、愛媛県産「レッドパール」、静岡県産「章姫」、栃木県産「とちおとめ」の被害が大きい。  1990年代中頃、日本の個人業者や自治体が、韓国の一部の育成者に「個人栽培」を許可したものが流出して無断栽培が広がった。  2000年代初頭、韓国のイチゴ市場は日本品種が90%を占め、韓国品種は1%程度にとどまっていた。  ところが、2002年、韓国が植物新品種保護国際同盟(UPOV)に加入すると、日本政府は章姫・レッドパールなどの開発育種家にロイヤリティを支払うよう韓国側に要求したが、韓国は日本品種を「梅香」や「雪香」に植え替えた。 「雪香」の普及に比例して韓国のイチゴ生産量が増加し、2002年に5726億ウォン(約532億円)だった生産額は、13年に1兆ウォン(約930億円)を超えるまで成長した。  韓国で年間生産額が1兆ウォンを超える農作物は、秀吉軍が持ち込んだ唐辛子と日本が統治時代に持ち込んだイチゴくらいしかなく、朝鮮通信使が持ち込んだサツマイモと合わせて、農産品も日本に依存していることになる。  韓国は「梅香」を香港やシンガポールなどに輸出しており、18年2月、農水省は韓国で育成者権を取得していれば、年間16億円のロイヤリティを得られた可能性があり、また13年から17年の5年間に喪失した輸出額は220億円に上ったと推計した。

農作物の不買が始まったが

今年3月、米国で韓国産エノキタケを食べた4人が死亡、少なくとも30~32人が食中毒で入院するという事件が発生した。  そのあと韓国は、白色エノキタケを日本製品不買運動に追加した。  SBSが11月5日に放送した番組で、韓国で栽培されているエノキタケは75%が日本品種で「日本に毎年10億ウォン(約9400万円)以上のロイヤルティが支払われている」と紹介している。  韓国品種は茶色エノキだが、消費者は「腐っている」と勘違いして、日本品種を選ぶという。  番組後、ネット上に「白色エノキタケ不買運動」を呼び掛ける掲示板が登場し、「白色は食べない」「スーパーで売ってくれれば茶色を選ぶ」など、賛同の声が上がり、大手スーパー「イーマート」は茶色エノキのテスト販売を開始した。  一方、韓国農村振興庁は、エノキタケは大量生産作物で、国内生産量の60%を占める農家が日本品種に合わせた生産設備を有しており、農家が費用をかけて他の品種に変えることは難しいと話している。  今年8月、韓国政府は日本品種米を縮小すると発表した。  韓国の米売り場には、「コシヒカリ」「秋晴れ」「ひとめぼれ」が並んでいる。 「イーマート」の米の販売員は「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」を積極的に販売する。韓国品種よりおいしいからだ。  日本品種は2019年末時点で韓国稲栽培面積の約9%(6万5974ヘクタール)を占め、主に首都圏と中部地域の米どころで栽培されている。  韓国国立食糧科学院は、「三光(サムグァン)」「嶺湖(ヨンホ)真米」などを外来品種に代わる普及品種に選定し、2019年末時点で、稲栽培面積全体の24・8%まで拡大した。  韓国農村振興庁は、高品質稲の品種開発と生産・流通供給拠点団地を造成すると発表、日本品種の栽培面積を2024年までに1万ヘクタール以内に縮小する方針を掲げた。

「シャインマスカット」なども流出

 日本の農林水産省は、サツマイモやイチゴのほか、みかんの「せとか」やブドウの「シャインマスカット」、また、もも、すももなどが韓国に流出した可能性があると見る。  海外で栽培差し止めやロイヤリティの支払いを求める権利を行使するには、現地での品種登録が必要だが、「べにはるか」は国際条約(UPOV)に基づく登録出願期限を過ぎており、また、イチゴも日本側が「梅香」の研究資料を要求して、遺伝子検査を行ったが、権利を行使できる品種ではないことがわかった。  一方、韓国のイチゴ農業試験場長は、いずれ「雪香」を凌駕する品種が出てくると考え、品種研究の助力を得ようと日本に出張したが、「温室の外側だけ見て行け」と栽培温室を閉じられて、門前払いに遭ったという。

今月17日、新しい品種として登録された果物などの種や苗木を海外に無断で持ち出すことを規制する種苗法改正案が衆議院農林水産委員会で可決した。19日には衆議院本会議で可決され、参議院に送られている。  日本製素材が含まれる製品は売らない・買わないと宣言する一方、日本品種を増殖させ、日本品種の交配を行った農作物は国産を装ってきた。  農作物は新しい品種が出るまで長い年月がかかる。日本のイチゴから「梅香」を生み出すまで6~7年をかかっており、日本品種が手に入らなければ、さらに時間がかかるだろう。菓子や工業製品のようにはいかないのだ。  韓国農業が今後、無断で日本に依存する途は閉ざされる。 佐々木和義 広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。 週刊新潮WEB取材班編集 2020年11月23日 掲載

https://news.yahoo.co.jp/articles/e6a0b0f7ee29c5af83847daf8e3ef50f0b6c2b31?page=1

デイリー新潮


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