日本の建築家・安藤忠雄が再開発を手掛けたマンチェスターの中心部に位置する庭園「ピカデリー・ガーデンズ」のコンクリート製の壁の取り壊しが始まる、と「BBC」など、イギリスのメディアが報じた。 報道によると、壁は建設直後から「モダニズムの名作」、「緑地にそぐわない」と市を二分する論争を巻き起こし、“マンチェスターのベルリンの壁”と呼ばれていた。 ピカデリー・ガーデンズは、安藤が手掛けたイギリスで唯一のプロジェクトで、長さ130メートルのコンクリートの壁と、パビリオンが2002年に完成していた。

世界最悪の観光スポット?

英紙「ガーディアン」によると、“ベルリンの壁”は、建築関係者が日本のミニマリズムのすっきりしたラインと崇める一方、麻薬の売人たちを引きつけており目障りであると不満も相次いでいた。 また、旅行情報を掲載するウェブサイトの「トリップアドバイザー」でピカデリー・ガーデンズがマンチェスターの最悪観光スポットの一つとして評価されたことの原因だとも非難されていた。 2014年には、市議会は、解体するには費用がかかりすぎるとして、緑で覆う計画を発表。また、構造物の一部(レストランを含むパビリオン)は個人の手に渡っており、所有権の問題もからんでいた。 しかし、今年初めに市議会は独立している壁の部分的な取り壊しを決定した。 市中心部の広報担当である、パット・カーニー議員はマンチェスターの誰もが待ち望んでいたニュースと喜び、「ピカデリー・ガーデンズを、街の中心を活気に満ちた魅力的な本来あるべき空間にするための計画の一歩だ」と話した。 一方、20世紀の建築を支持するグループ「モダニズム協会」のエディ・リードは、ピカデリー・ガーデンズには根本的な問題があり、壁を壊しても解決しないと市の決定を非難し、「建築をより大きな問題の、身代わりの刑として利用することは非常に安直だ。そして政治家が問題解決に向かうのではなく、なんら対策もせずに建築を非難することは非常に安直だ」と述べた。 さらに、安藤の作品について「現代建築を知る人なら誰でも安藤忠雄が世界的な建築家であることを知っている。世界のどの都市も、安藤の建築が欲しくてたまらないだろうに」と語った。

4分の3が「嫌い」

壁の問題を熱心に報道していた地元紙「マンチェスター・イブニング・ニュース」は、取り壊し開始を前に“ベルリンの壁”のこれまでの歩みをまとめた。 壁とパビリオンは、1996年に起きたアイルランド共和軍(IRA)の爆弾事件の後に、国際コンペを経て、2002年のコモンウェルスゲームズ(註:イギリス連邦に属する国や地域が参加して4年ごとに開催される総合競技大会)に間に合うように完成された。 だが市を二分する論争を引き起こし、2014年に同紙は読者数千人を対象に世論調査を行い、犯罪率や殺伐とした雰囲気に対する不満を理由として、4人のうち3人がこの庭園を「嫌っている」との結果を得た。 2年後、壁を取り壊して庭園を「素晴らしき1950年代の状態」に戻すことを求める同紙の請願書に2万人以上が署名。そして今年8月、広場を改善し、反社会的行動を取り締まるための計画の一環として承認され、11月初めに解体日時が決まった。 計画ではまずは自立している壁の部分が取り壊され、将来的には民間所有のパビリオンの建物に結合する壁の残りの部分も解体される可能性もあるという。 同紙もカーニー議員の喜びの声を掲載。一方で、解体を反対するリードの辛辣なコメントをより詳細に引用した。 「日本では安藤の作品は尊敬されているが、マンチェスターではクソみたいに扱われている」 「マンチェスターが世界クラスの都市になりたいのであれば、平凡な建築物を市中心部の一等地の広場に置くわけにはいかない」 同紙は2013年に安藤にインタビューし、当時地元で出されていた庭園のパビリオンを緑で覆うという提案を歓迎する、という安藤のコメントを掲載。 取材に対し、安藤は「私にとって、建物が建てられたからといって、それが完成したわけでも、最終的な形になったわけでもない」、「建築は進化していくものであり、我々建築家は建物を世話し、育てていかなければならない」とコメントしている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/2c8ca8a2edee536db3c83e318a6d3e41454ba302?page=2

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