エンターテインメントの世界で欧米でも人気を集める韓流。それが今度は政治的なメッセージにも影響を与えている

BTSがビルボードの1位獲得に続きグラミー賞にノミネートされ、映画でも『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞受賞した2020年。これまで以上に韓国カルチャーが世界から注目を集めるようになった。【ウォリックあずみ】 [映像] 世界で政治メッセージにハングル利用 そうすると、今度は「K-POPアイドルが母国語で何を言っているのか知りたい!」「日本語訳の付いていない映画やドラマも見てみたい!」といった思いを抱いて韓国語の勉強を始める人も増え始める。

そういった韓国語学習者が世界規模で増加し、今、韓国語は世界中の人々がグローバルにメッセージを伝える一つのツールになりはじめている。 <ナガルノカラバフ紛争めぐりハングルで反戦メッセージ> 今年10月、アルメニアの若者たちがハングルで書かれた看板でオンラインデモを行い話題となった。アルメニアは、隣国であるアゼルバイジャンと領土・宗教など様々な理由で争ってきた。90年代初頭から数年にわたり大規模な衝突を繰り返し、最近でも2016年、2019年、そして今年9月にも軍事衝突が勃発し数百人規模で民間人が亡くなっている。 そんな状況のなか、アルメニア人の若者は反戦と平和を訴え、なんと母国語ではなくハングルでメッセージを書き、オンラインを通じて世界中のK-POPファンやKカルチャーファンの人々に訴えたのだ。 さらに、ツイッターでもハングルでの書き込みを始め、アルメニアの悲惨な状況を、写真と共に投稿して注目を集めていた。現在、和平には長期的課題が残るものの、両国は一応停戦に合意している。停戦にアルメニアの若者たちの韓国語でのメッセージがどれだけ役立ったのかは不明だが、世界中の人びとにこの問題を認識させる助けになったことは確かだろう。 彼らが韓国語に注目したのは、今世界で注目を集めている文化であることはもちろん、K-POPアイドルが、国際的な社会問題に目を向け影響力をもっていることも大きい。 特に冒頭でもふれた世界的活躍をみせるBTSは、国連でスピーチを行ったり、国際イベントに参加したり、その活動の幅はただのアイドルの枠には収まらない勢いだ。 BTSのファンたちもそのスピリッツを受け、自発的に慈善活動グループを作り活動しているのも興味深い。最近では、BLM活動に募金を呼びかけ、なんと1億円近くの寄付を成功させて国内外で話題となった。

チリやタイでは反政府デモでK-POP活用

メッセージをSNSで発信する際、BTSなど世界的に人気のK-POPアーティストの関連ハッシュタグを付けて投稿すると、検索に引っかかって多くの人の目に留まる効果があるという。昨年10月頃、チリで行われた大規模デモでも、この手法が使われ注目された。 チリの首都サンティアゴを中心に行われた反政府デモでは、デモの呼びかけや反政府メッセージをSNSで投稿する際、多くの人が「#BTS 」「#K-POP」などのハッシュタグと共に、K-POPアイドルの画像も一緒に添付しているのをよく見かけた。 チリ政府が発表した「デモ開始時(10月中旬)から1か月間のデモに関するSNS書き込みに関する分析」によると、1か月で関連投稿6000万件のうち、K-POPに絡めて投稿された内容は、400万件にも及んだという。 タイではデモの募金で1000万円集める 反政府デモといえば、最近では10月中旬にタイで行われた大規模デモでK-POPの影響力が注目を集めた。10月20日に報道されたタイの現地メディアによると、タイのK-POPファンたち(主に少女時代/BTS/GOT7/SUPER JUNIORのファンら)が力を合わせて、デモ隊の必要な物品を購入するための募金を開始した。その結果300万バーツ(約1000万円)も集まったという。。 またK-POPファンといえば、お金を集めて街頭看板掲載権を買い、広告でアイドルの誕生日を祝うことでも有名だが、タイのファンたちは、タイの地下鉄にこういった広告を出さないボイコットを始めた。これは、デモ隊が移動し集結させないよう地下鉄が一部駅のゲートを閉めたことについて抗議する一種の不買運動である。 さらに、デモの最中にもパフォーマンスとしてのK-POPが用いられている。デモ隊の若い層を中心に、K-POPを歌いながらデモ行進をする姿や、SNSでダンスを踊る映像の投稿など多く見られた。 特に、少女時代の2007年の歌『また巡り合えた世界(Into the new world)』が人気なのだという。確かに、サビの部分の歌詞には、悲痛な過去から未来へ希望をもって進んでいくイメージが描かれており、デモ隊に重なる部分も多い。ちなみに、韓国で2017年に当時の朴槿恵大統領の弾劾を求めるデモの最中にも、この曲が歌われていたことは有名だ。 大阪で中国の女子と韓国語で会話 以前大阪でこんな経験をしたことがある。道で中国語圏の女の子二人組に道を聞かれたが、彼女たちは日本語も英語が通じず、こちらも中国語がわからなかった。ダメもとで「もしかして韓国語わかりますか?」と尋ねたら一人の女の子がK-POPファンで韓国語を勉強しているという。日本人と中国人の二人が「韓国語」によって意思疎通できる世の中になったのだ。 これは小さな例だが、このような出来事が、世界規模で起こっている。ハングルを使うことで韓国人とだけではなく、世界中にいる人々と繋がれ、韓国語は国境を越えてメッセージを伝えることができるツールのような役割を担うようになった。K-POP/Kカルチャーは今、このような部分にも影響を与えるようになったのだ。 日本のTOPIK(Test of Proficiency in Korean=韓国語能力試験)受験者は、若い層を中心に5年連続増加し、もうすぐ40万人を超えるとみられている。日本の若者は、これから韓国語を使ってどのようなメッセージを世界に発信し、世界の人々と交流していくのか楽しみである。

https://news.yahoo.co.jp/articles/a9bf42351a080a8eecc6d47a4d4625459a93b0fd?page=2

ニューズウィーク日本版

【関連記事】


PDF