<「世界で最も「私権の制限」に慎重な日本」は変わるか>

安倍晋三首相は4月10日、「第3次世界大戦はおそらく核戦争になるであろうと考えていたが、コロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦であると認識している」と田原総一朗氏に述べたと聞く。【安川新一郎】

「コロナ禍は第3次大戦」 安倍首相、田原総一朗氏に伝える https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041600829&g=pol 当時、ヨーロッパとニューヨークで感染爆発と医療崩壊が起き、ロックダウンに踏み切っていた。また日本でも緊急事態宣言が発令された。 但し、その宣言に罰則規定がない点については、「こういう時に罰則規定を設けないのが戦後日本の体制だ。それをやると圧政になる」と安倍総理は語ったと聞く。 日本政府の対応はこれまで場当たり的で後手後手で、哲学、戦略、ビジョンがないと言われてきた。但し、「私権の制限」には、野党の反対もあり極めて一貫して慎重だった。新型インフルエンザ等対策特別措置法第5条においても国民の自由と権利の制限は必要最小限のものでなければならないと定められている。 <世界で繰り広げられる法的根拠に基づく隔離と行動制限と個人の戦い> 元科学者でもあるドイツのメルケル首相は、「すべての人の命に救うべき価値がある」と訴え、このクリスマスも感情的な表現で国民にロックダウン生活の必要を訴えた。経済よりも国民の命を救うことを最優先する、という哲学だ。これまでは財政規律に厳しかったがそれも方針転換した。 一方、トランプ米大統領は新型コロナウイルスは「風邪のようなもの」といった発言を繰り返し、マスクの着用や経済活動の自粛には否定的な見解を繰り返し、経済を優先させる方針を貫いた。大量の感染者と死者を出した一方で、おそらくは自身の大統領選挙に間に合わせたかったことが最大の理由とはいえ、ワクチンの開発と承認を急がせ、異例とも言えるワープ・スピード作戦で1年での開発にこぎつけた。トランプ大統領の数少ないレガシーと言って良い。とにかく経済優先、コロナはワクチンで解決という一つの哲学だ。 中国は強権的に1000万人規模の強制大規模検査で無症状者を洗い出し隔離し、短期間でも抑え込みに成功した。但し、当局の判断は絶対で市民の行動は相当制限される。とにかく国家統制優先というのが哲学だ。 中国では、当局が感染周辺地域と指定した地域に赴いていただけで申告義務がありホテルに14日間隔離される。 シンガポールでは、ロックダウン期間が始まり、オフィスに仕事で必要なスマホを取りに帰っただけの駐在員が監視カメラで判明し国外退去になったり、子供と公園でバドミントンをしていた親子に罰金3万円が課されたりしたと友人から聞いた。 ドイツ人の友人は、日本人が全員が「罰金がないのに」マスクをしていることに驚いていた。

秋冬に増えるのはわかっていたのに

スイスのスキー場でコロナ隔離中の英国人200人が夜中に逃亡した。 スイスのスキー場でコロナ隔離中の英国人200人、夜中に逃亡 https://www.afpbb.com/articles/-/3323694?fbclid=IwAR15PBeebDGIjhe78k4JZaZiRge3LpLpqxjjuYuZWyUhqtdmWx6G05GEp-M 日本人はあまり認識していないが、第2波が訪れ変異種が感染拡大している海外では、罰金、国外退去、強制隔離が日常だ。世界中で隔離や行動制限で感染拡大を押さえたい当局と自由な生活を守りたい個人が闘っている。 <大人数での忘年会、深夜の2次会、冬休みの帰省旅行以外は普通の日常が送れている日本> 対して日本の戦略は、「私権の制限をできる限り行わず、緊急事態宣言にも罰則規定も設けず、大人の国民に自粛行動を期待しつつも経済活動は維持し経済の打撃を回避する。国民の自粛行動によって感染拡大による医療崩壊を避けながら時間を稼ぎワクチンの開発を待つ」というもの。 ・経済活動自粛も飲食店等への時短「要請」のみ ・移動旅行飲食の国民の日常の接触制限にも自粛「要請」のみ ・コロナ対応病院として患者を受け入れるかどうかも病院へ「要請」のみ 先程の中国の人、ロックダウンのヨーロッパ、シンガポールの市民からみると桃源郷のような世界だ。 <この冬の感染拡大を見越して秋の国会で補償と罰則規定の伴う特措法の改正ができていれば> 本来、空気が乾燥して寒くなる秋冬は、春夏とは違って風邪が流行しやすい。そして北海道では関東より1ヶ月前に冬が来る、そして北海道で先に来た冬の感染現象は1ヶ月後には寒さとともに関東にも来る。当然のことだ。 そうしたなか菅政権は感染も10月には一旦収まったとして、如何に感染予防しながら観客を入れたオリンピックが開催できるかと、横浜球場で収容人数を増やす実験などを行っていた。またGoTo対象に東京を加える等経済優先を新政権として押し出した。 春の緊急事態宣言解除後相当の時間があったにもかかわらず、秋の国会では、オリンピックの1年延期に関わる改正法や、学術会議問題に明け暮れ、肝心の新型コロナ対応に向けた特措法の改正は先送りされた。 コロナ対応は、法的には未だに感染症法上「政令で2類相当の感染症として時限的に準用された措置」を行い「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正で緊急事態宣言を出したり、罰則規定無く外出自粛「要請」や休業「要請」ができるようになっているだけだ。 新型インフルエンザ等対策特別措置法について 内閣官房 https://corona.go.jp/news/news_20200405_19.html 秋冬に向けて、国会会期中に特措法の改正をしていれば、年末年始の今、法的強制力のある具体的な施策が打てるはずだったが、結局春から関連法案の整備は未だに進んでいない。

野党は羽田議員の弔い合戦を

結局、「空気」を読んだ国民の「同調圧力」による「自粛」だけで年末年始の危機を乗り切ろうとしている。 病院も、個人も、飲食店も、「私権」は罰則も無く相当守られているが、その分各人の「モラル」や「世間からの同調圧力」への対応、を求められているのが日本の現状だ。 新型コロナ特措法を整備して本当の政府主導のジャパンモデルを 支持率急落に伴い、ようやく「空気」を読んだ総理が方針転換し、GoToを一時停止し、時短要請への協力金を支援措置として盛り込む改正法を審議し1月中の成立を目指すべく重い腰を上げた。 また新型コロナウイルスに感染した患者の病床を確保するため、病床が逼迫(ひっぱく)している地域で新型コロナの重症者向け病床がある医療機関に対し、1床当たり1500万円を補助するという。 一国の総理に危機に望む哲学と国民に語る言葉がなく、支持率という「国民の空気」で右往左往するだけでは、仮に結果として新型コロナの感染拡大と死者数が押さえられても、誰も日本政府の卓越した「ジャパンモデル」とは評価しないだろう。 昨日、現役の国会議員として羽田雄一郎氏がコロナ感染で死亡した。24日に発熱をしてから3日での死亡だ。コロナはただの風邪ではない。保健所や医療機関に配慮して自宅療養に努めていたという。即、検査入院していれば助かった命だ。野党も、弔い合戦として協力して特措法の改正に取り組むべきと考える。 この寒い冬、菅政権に残された時間はあまりない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e2dde32e2f1a263dcdff17e540ce286b244f28f6?page=3

ニューズウィーク日本版

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