トランプ政権は弾圧を声高に非難したが、政治利用もしていた。中国との対話の可能性も探る米新政権は「文化的ジェノサイド」をどう止めるのか。その本気度を見極めるバロメーターがいくつかある。

【デービッド・ブレナン】ジョー・バイデン新米大統領は、民主主義と人権を世界に広げることに力を尽くし、中国にもタフな姿勢で臨むと誓っている。中国共産党には悪いニュースだが、中国当局に弾圧されてきた少数民族と民主派活動家にとっては良いニュースだ。

【動画】中国歴史ドラマ『大秦賦』予告編 バイデンがかつてのアメリカの読みの甘い対中政策、すなわち経済関係の強化を通じて、中国を「良い子」にする政策に回帰すれば、習近平(シー・チンピン)国家主席率いる中国の現指導部はさらに図に乗り強権的になるだろう。 だが選挙戦中、バイデンはそうした懸念を払拭しようとしてきた。実際にどうするかは、これから分かる。 2013年に権力を握って以来、習は国内の反政府的な動きを完全に抑え込み、基盤を固めてきた。習が進めてきた残酷かつ全体主義的な政策の最たるものは、中国西端の新疆ウイグル自治区に暮らすイスラム教徒の少数民族ウイグル人に対する弾圧だろう。 ウイグル人をはじめ、中国の少数民族はバイデンの率いる次期米政権に大きな期待を寄せている。バイデンの対中政策にはさまざまな課題が含まれるが、「自治区で起きていることを忘れないでほしい」と、活動家たちは訴えている。 「多くのウイグル人が彼を非常に信頼し希望を抱いている」と、ウイグル人活動家のジョウハー・イリハムは言う。彼女の父親は、中国当局に逮捕され、今も獄中にいる経済学者イリハム・トフティだ。 一方、アメリカに本拠を置く支援組織「ウイグル人権プロジェクト」(UHRP)のピーター・アーウィンは、ウイグル人の間には「多少の警戒感がある」と話す。中国に敵意をむき出しにしたトランプ政権と違って、バイデン政権の政策は「未知数」であるためだ。 もっとも、UHRPは楽観視しているとも、アーウィンは付け加える。ウイグル人の訴えは既に米政界で超党派の幅広い支持を得ているからだ。加えて、一国主義的なアメリカ・ファーストを掲げていたトランプと違って、バイデンなら同盟国と広範な共同戦線を張って、中国を牽制できるとの期待感もある。 中国当局は「再教育施設」と称して新疆ウイグル自治区に収容施設を次々に建設。100万人を超えるウイグル人を収監してきた。 迫害の犠牲者は被収容者だけではない。ウイグル人にとっては自治区全域が檻のない牢獄のようなもの。当局は監視カメラなどで住民の行動に目を光らせ、少しでも反政府的な兆候があれば容赦なくつぶす。令状なしの家宅捜索や恣意的な逮捕も日常茶飯事だ。

「トランプは習に収容施設をどんどん建てるよう勧めた」

<人権問題を政治利用した男> 一方で、中国当局はウイグル人の住宅や墓地、モスクを次々に取り壊し、自治区の中国化を進めている。こうした動きは「文化的ジェノサイド(集団虐殺)」とも呼ばれる。 中国は少数民族弾圧を一貫して否定。再教育施設を建てたのはテロ対策のためであり、過激思想に染まった若いウイグル人に職業訓練を受けさせ社会復帰させることが目的だと強弁している。 中国全土でテロ攻撃を行い、多数の死者を出してきた分離独立派やイスラム過激派を抑えるには、こうした対策が必要だ、というのだ。しかし批判派に言わせれば、テロ被害に対して収容施設の規模はあまりに大きく、どう見てもその実態は「強制収容所」だ。 中国を目の敵にするトランプ政権はウイグル人弾圧を声高に非難してきた。マイク・ポンペオ国務長官は中国当局の弾圧を「世紀の汚点」と呼び、マイク・ペンス副大統領は抑圧された人々と連帯すると宣言。ドナルド・トランプ大統領も超党派の議員の圧倒的な支持を得て可決された「ウイグル人権政策法」に署名し、中国政府の人権侵害には制裁措置を取る方針を打ち出した。 ただ、その本気度には疑問符が付く。トランプの国家安全保障担当補佐官だったジョン・ボルトンは退任後に出した暴露本で、トランプは習に収容施設をどんどん建てるよう勧めたと書いている。 人権問題を政治利用しかねないトランプと違って、バイデンなら一貫性ある明確な姿勢を取れると、アーウィンは期待する。 <「強制労働防止法案」を支持?> それでも中国に関わる課題は多く、バイデンはそれらの兼ね合いを取らなくてはならない。例えば、気候変動対策で中国と協力するためには貿易合意で譲歩せざるを得ないかもしれない。 バイデンの戦略は未知数だが、中国は利用できるものは何でも利用しようとするはずだ。外交には駆け引きは付き物だが、人権問題は他の課題と切り離して原則を貫いてほしいと、アーウィンは言う。 次期政権の本気度を測る指標として、イリハムはいくつかの具体的な措置を挙げる。第1は「ウイグル人権政策法」が義務付けているように自治区の人権状況を調査して議会に報告するかどうか。 第2に、既に下院で可決され、上院での成立を待つ「ウイグル強制労働防止法案」を支持するかどうかだ。ナイキやコカ・コーラなどの大企業がこの法案に反対しロビー活動を繰り広げている。

今のほうがウイグル人弾圧への国際社会の怒りは高まっている

一方で、イリハムが高く評価するのは、米税関・国境取締局が中国国有の開発事業体で準軍事組織である「新疆生産建設兵団」からの輸入を一時停止したことだ。ウイグル人の強制労働で生産された疑いのある製品の輸入を止めたことは「重要な一歩」であり、「バイデン政権もこれを優先課題に据えてほしい」と、イリハムは訴える。 トランプ政権発足時より今のほうが、ウイグル人弾圧に対する国際社会の怒りは高まっている。だが、中国のような豊かな超大国に改善を迫るのは困難だ。中国の資金力と戦略的な重要性から、イスラム教徒が多数を占める国々ですら、宗教的な同胞への弾圧に口出しできないでいる。 それでも国際社会が一丸となって中国に圧力をかければ、「大きな変化が起きる」と、イリハムはみる。バイデンがその旗振り役を務めれば、ウイグル人の期待にしっかり応えたことになる。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7a402bdd39cef88482b6a7b8cdf594235ab4c398?page=3

https://news.yahoo.co.jp/articles/7a402bdd39cef88482b6a7b8cdf594235ab4c398?page=3


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