エーゲ海に浮かぶギリシャ・サモス島。欧州を目指す難民・移民の「玄関口」となってきたこの島の難民キャンプでは、新型コロナウイルスの流行後も中東やアジアからたどり着いた4800人が、劣悪な環境で暮らしている。コロナ禍の移動規制などで多くの支援団体は活動を停止し、テントや水などの物資は不足する一方だ。現地に残り、支援を続けるNGO「国境なき医師団」(MSF)は、欧州諸国に早期受け入れを求めている。 【緊急事態宣言】前回と今回の違いは?  サモス島のキャンプで暮らす人々の多くは、迫害や貧困を理由に祖国を離れ、海を挟んで数キロ先にあるトルコからゴムボートなどで密航してきた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が用意したテントは700人分に満たず、多くはNGOなどが設置したシェルターで暮らす。避難民が暮らす一帯は劣悪な環境から「ジャングル」と呼ばれる。ギリシャ当局による支援は限定的で、手を洗うための衛生的な水は足りず、配布される食料も賞味期限が切れていることが多い。  キャンプでは2020年9月中旬、初めて新型コロナの感染者が確認された。その後、1カ月半で少なくとも170人に感染が広がった。MSFでサモス島の医療チームリーダーを務めるミリアム・モーリナーさんによると、簡易検査で陽性と判断された人はコンテナのような隔離施設に収容される。性別、国籍、文化の違いは考慮されず、薄いマットだけが敷かれた一つの施設に12人が詰め込まれる。外から施錠されて水は使えず、トイレのたびにドアをたたいて知らせなければならない。隔離施設へ収容されることを恐れ、キャンプで暮らす人たちは新型コロナの検査を受けなくなった。  10月中旬にはキャンプで火災が相次ぎ、約870人がテントや所持品を失った。劣悪な環境で精神的に追い込まれた人による放火が疑われているという。キャンプで暮らすシリア難民のエカラス・コウタさんは「ここに安全はない。また火災が起きるんじゃないかと思うと、心配で眠ることもできない」と暗い表情で話した。  欧州連合(EU)では、難民が到着した国が保護の責任を負う制度がある。加盟国で受け入れを分担する新しい枠組みづくりの議論は足踏みしており、ギリシャを含む地中海沿岸の国では難民申請者が「滞留」する事態が続く。  欧州を襲う新型コロナ「第2波」の影響で、難民への支援が先細りする中、サモス島は冬を迎えた。モーリナーさんは「ここは人が住む環境ではない。一刻も早く、ギリシャ本土やヨーロッパ各国に人々は移送されるべきだ」と、欧州諸国に対策を急ぐよう訴えた。【中村紬葵】

https://news.yahoo.co.jp/articles/4eabfc5427663f329f51d8ab970fd92e2276f377

毎日新聞


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