年間施術者のべ2000万人と、米国、ブラジルに次ぐ世界第3位の美容整形大国・中国。低年齢化も進み、わずか13歳から整形を始め、16歳で全身に100回以上メスを入れた女子高校生がインターネットでスターとしてもてはやされている。深刻な後遺症を抱える彼女だが、それでも整形をやめるつもりはないという。彼女が終わりなき自己改造を続ける理由とは? 【画像】16歳で手術100回!後遺症で記憶障害…中国「整形インフルエンサー」がそれでも“お直し”をやめられないワケ

16歳「整形マニア」のインフルエンサー

香港ニュースサイト「頭条日報(ヘッドライン・デイリー)」は、美容整形手術を繰り返しすぎて、後遺症により記憶力が低下しつつあるという16歳中国人女子高生の話を伝えた。国際美容外科学会(ISAPS)の2019年統計によると米国、ブラジルに続く世界第3位の整形大国となり、患者数はのべ2000万人(北京完美創意科技『2018中国医美行業白皮書』)に上る中国とはいえ、整形漬け女子高生の話は大きな驚きをもって受け止められている。 彼女の名前は周楚娜(ヂョウ・チュウナ)。2004年7月4日四川省成都市に生まれ、現在、上海市に住む高級中学(日本の高等学校に相当)2年生だ。2017年、13歳で初めて美容整形手術を受け、これまでの3年強で400万元(約6400万円)以上を投じ、100回以上の施術を受けたという。 2020年3月、周楚娜は自身の整形遍歴を綴った「整容日記」をミニブログ「新浪微博(ウェイボー)」に発表。「中国最年少、施術回数最多の整形マニア」のキャッチフレーズと赤裸々な内容はたちまち若者たちの心をつかみ、フォロワー数31万人超えの人気アカウントとなった。 「昔から憧れだったバービー人形の目を獲得するために、目だけで15回メスを入れ、理想的な二重を手に入れたの。美しさを保つために、整形後も毎年、検査とメンテナンス手術が必要。それが面倒だと思う人に整形は薦められないわ。神様が私の顔を創造したとき、それは完璧とは程遠い残念なものだった。だから私は、自分のお金を使って自分の顔を作っているわけ。整形は、他人を喜ばせるのではなく、自分自身を喜ばせ、人生の瞬間、瞬間を生き生きとしたものにすること。他人にとやかく非難されることじゃないわ」

「ブスは長生きできないと思った」

「神様が創造した私は本当にブスだった。目は小さく、団子鼻で、クラスの人気者の女子とは正反対だった。男子生徒はいつも女子の外見を話題にし、私にいろいろ侮蔑的なニックネームを付けた。だから私は自己肯定感が低く根暗な子で、しばしば差別的な扱いを受けたわ。クラス替えのたびに、男子たちは可愛い女子に簡単な当番を割り当て、私には汚れやすく疲れる係ばかり押し付けた。私は毎日、疲労困憊で、ブスは長生きできないと思い詰めるようになった」 「13歳で、初級中学(日本の中学校に相当)に上がってすぐ、母に頼み込んで、初めて美容整形クリニックを訪れ、二重埋没法の手術を受けた。正直なところ、両親は私の整形資金を出してはくれるものの、心の底から手術に賛成してくれているわけではない。彼らの口調や態度でわかるわ。整形に頼りすぎると早く老けると忠告してくる親戚もいたけど、二重まぶたになった後、クラスメートの態度が豹変し、私に嫌がらせをした子までもフレンドリーに接してくれるようになった。整形の甘い蜜の味わいって、実はこの周囲の変わりようだと思うの。私はすぐクリニックに2回目と3回目の手術を予約した」 周楚娜は朝から晩まで鏡を眺めては、コンディションが悪い部分を探すようになり、違和感のある部分には即、メスを入れる。スマートフォンでセルフィーを撮り、ビフォー/アフターを執拗にチェックするようになった。「欠点」を見つけてガマンできなくなって、成人の知人の身分証を使って年齢を偽り、未成年に施術が禁じられているハードな手術を予約したことも。 これまでに二重まぶたのほか、耳介軟骨移植による鼻形成、小顔のための冷却により脂肪細胞を破壊する顔やせ、目頭切開、脂肪溶解剤注入、自家脂肪注入による豊胸、大腿部360度環状脂肪吸引、フラクショナルECO2レーザー照射、骨セメント充填、ヒアルロン酸注入、ボトックス注入、口唇縮小などおびただしい数の美容整形手術を繰り返してきた。2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で、多くの美容整形クリニックが休診となり、周楚娜の手術回数は減ったが、それでも約20回、自身の身体にメスを入れた。常に何かしらの手術をした直後であるため、「天天基本都是術後恢復期(毎日がダウンタイム=術後回復期)」が彼女の口グセになった。

深刻な後遺症、でもやめられない…

ここまで過度の整形手術を強いられている16歳少女の肉体が、悲鳴を上げないはずがない。周楚娜は目に見えて体調不良を訴えるようになった。目頭と目尻をたびたび切開し、形成した二重まぶたも修正しまくったため、角膜が脆く壊れやすくなり、さらに大きなサイズのカラーコンタクトレンズを愛用し、コンタクトレンズ洗浄液やクレンジングクリームなどのメイク落としの成分が頻繁に目に混入した影響で、ある朝、彼女の目に激痛が走り、視力が急低下した。 医師は、少なくとも1ヵ月は、コンタクトレンズや近視矯正メガネの装着を禁じた。だが周楚娜は、北京市でおこなわれるイベント出演が迫っていたため医師の忠告を無視し、ふだん通りコンタクトレンズと厚化粧をして北京に出かけた。彼女にとって、眼病の進行よりも、フォトジェニックに撮影されないことのほうが深刻な問題だったのだ。 さらに、手術のたびにおびただしい回数の麻酔薬を注射するため、周楚娜の記憶力は減退していき、脂肪吸引後に皮膚の張りが低下し、脚と胸の下には、一生消えない大きな手術痕がいくつも残った。 もちろん、カネのために周楚娜の注文を丸呑みしていた医師ばかりではない。ある懇意の医師は執刀を拒み、これ以上手術をしないよう強く警告した。だが周楚娜は「先生、止めるのは非常に難しいの。無理よ。絶対やめられない。私は整形にもう100万元(約1600万円)以上を使っちゃってるし、今さら中途半端なカラダで終わらせたくない」と反論。もちろん彼女の両親は娘の整形依存に困惑している。だが、「やりたいことをやれないなら、学校になんか行きたくない。お父さんもお母さんも私の容姿の悩みを解決することができないでしょ! だったら口出ししないで。私の手術には黙って同意しなければならないのよ!」と娘に詰め寄られれば、返す言葉が無かった。 周楚娜は私立の国際学校(海外大学留学を目的にした中国人富裕層向け学校)の高等部に通いながら、メディア出演やライブ配信にいそしんでいるという。だが生半可な勉強ではすぐ落第してしまう。日々、整形やメイク、ライブ配信に熱を入れ、たびたび手術やタレント活動で欠席している周楚娜は既に退学したとの見方が有力だ。

タブーではなくなった美容整形

「絶え間ない整形と後遺症に苛まれる人生、あなたは後悔していないのかとよく聞かれる。そうね、ここまで来ちゃったらやり続けるしかないし、後悔してないわ。飲み食いしなくても平気だけど、整形無しでは生きていけない。思えば初整形は13歳で、あまりにも遅すぎたって感じている。もっと早くからやっていれば、満足のいく結果を得られたのにと思うの。整形をどれだけ重ねても、いつもどこか少しだけ気に食わない。だから、次回の整形を終えればきっと世界はバラ色になると信じている。どんな痛みだって平気だけど、醜くなる、ブスに戻ることが何よりも怖い。麻酔を打たれて眠りに入るあの感覚がたまらなく好き。目覚めたら私は美しく蘇るから」 美容整形手術は、美貌を維持するための継続的なメンテナンス手術や服薬など術後に多大な労力を強いられる。とはいえ現役の高校生が、度重なる手術の影響で記憶力減退に悩んでいるとは深刻だ。全身麻酔後に記憶障害、認知機能障害などの合併症が起きることがある。 筆者も1年前に脳出血の全身麻酔開頭手術を受け、術後、一時的に、せん妄(睡眠障害、幻覚・妄想、見当識障害、情動・気分の障害、神経症状などが起きること)という記憶障害に苦しんだ。周楚娜の「記憶力」が具体的にどのように減退しているかは分からないが、彼女が整形を中断して、直ちに記憶障害の治療に入るべきなのは論を俟たない。 2003年に「中国初の人造美人」と呼ばれた郝璐璐(ハオ・ルゥルゥ、当時24歳)がメディアの前で素顔を公開し、手術の詳細を語ったことは多くの中国人女性に驚きを与え、長く「身体髪膚受之父母、不敢毀傷孝之始也(身体は親からの授かり物、傷つけないことが第一の孝行だ)」と言われてきた中国で、美容整形手術がタブーではなく一般化する契機となった。1人1回当たりの整形費用は5000~1万元(約8万~16万円)、患者の男女比は1:13で、30歳以下が全体の80%を占める。施術理由は、加齢で変化した容貌を修正するよりも好みの顔に近づける改造目的が多く、中国では「95後(ジウウーホウ:1995年生まれ~)」「00後(リンリンホウ:2000年生まれ~)」と呼ばれる20~25歳の若者たちが、ファッション感覚で気軽に美容整形手術を受けている。 高須クリニック院長の高須克弥医師は「“流行りの顔”は必ず廃れる」と強調する。昨今は、日本でも中国でも、極端な垂れ目を形成し、涙袋を強調し、顎が尖った逆三角フェイスラインなど「加工バリバリのマネキン顔」をオーダーする例が増えている。周楚娜もその例に漏れない。本来の骨格に逆らう極端なマネキン顔はこまめな調整が避けられず、早めにエイジングケアに入る必要があるという。 中国消費者協会の統計によると、2010年から2019年の10年間に美容整形手術で年平均2万人が術後に主治医やクリニックを術前約束違反、不当施術による傷害で訴えている。彼らのうち多くが感染症や皮膚壊死など不可逆的な病変を引き起こしているという。(Text by Jun Tanaka)

https://news.yahoo.co.jp/articles/dc97e04db198600612d8483e9d4bd52a54790b3d?page=4

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