有本香の以読制毒】  数日たっても怒りが収まらない。テレビから流れてきた、ある発言に対してだ。 【写真】サザエさん化した池上彰  「新疆ウイグル自治区の、あそこの多くの住民が強制収容所に入れられているとか、香港の民主化運動の人たちが次々に捕まっているという、ああいう問題に関して(ドナルド・)トランプ(前米)大統領は、これまで何も言ってきませんでしたからね。全然、人権問題に関心がなかったわけですね。ところが、(ジョー・)バイデン大統領、あるいは民主党というのは人権問題を重視するので…」  発言の主は、ジャーナリストの池上彰氏。日本中に知られた「テレビの物知りおじさん」である。NHK在職中に担当した、「週刊こどもニュース」の「お父さん」役のイメージそのままに、ソフトな口調で、“分かりやすく”世界のニュースを解説し、この15年、「お茶の間の人気者」であり続けた。  そんな池上氏のニュース解説に、しばしば誤りや問題があることは承知していたが、今回は到底看過できない。  冒頭の発言は、1月30日放送のテレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」で飛び出した。  まず、はっきりさせたいのだが、本コラムでは幾度も取り上げてきたとおり、トランプ氏は、米国の歴代大統領の中で最も熱心かつ実効的に、ウイグル問題をはじめとする中国の人権問題に関与した人だ。  「何も言ってきませんでした」「人権問題に関心がなかった」というのは、真っ赤なウソである。  例えば、2019年11月、トランプ大統領(当時)は、香港の人権と自治を擁護するための「香港人権・民主主義法案」および「香港に対する非致死性武器の禁輸法案」に署名した。2法案が連邦議会で可決されてから、わずか1週間での署名だった。  このときトランプ氏は「私は、習近平国家主席(党総書記)と中国、香港市民に敬意を表して法案に署名した。中国と香港の指導者や代表者が対立を友好的に解消し、長期的な平和と繁栄をもたらすよう期待する」という重厚な言葉を添えている。  さらに、20年6月には、「ウイグル人権法案」に署名し、ウイグル弾圧の責任が認められる中国当局者への制裁を可能とした。これは画期的なことだった。  2000年代初頭、当時のジョージ・ブッシュ(子)政権が、イラク開戦を北京に邪魔されたくないがため、「ウイグル問題」を取引材料に使ったことや、バラク・オバマ政権が、幾多のウイグル弾圧事件にも「戦略的無視」を決め込んだことに比べれば、段違いに人権重視の対応である。加えて、トランプ氏は北朝鮮による日本人拉致問題にも格段に重きを置いた。トランプ氏こそが「真の人権派」であると言って過言でないのだ。  一方、約20年、ウイグル問題やチベット問題を取材してきた筆者は、オバマ政権で副大統領まで務めたバイデン氏の、中国の人権問題に関する「実績」を寡聞にして知らない。池上氏や氏の番組スタッフの方々がご存じなら、ぜひともご教示いただきたいところだ。  怒るだけではらちが明かないので、本件について、夕刊フジ編集局を通じて、テレビ朝日に問い合わせた。質問のポイントは次の3点だ。  池上氏の「ニュースそうだったのか!!」での「ウイグル」に関する発言について、(1)御社は「事実」と考えているのか(2)「抗議」の声は寄せられているか(3)次回番組などで訂正されるか-。  これらに対し、テレビ朝日広報部からの回答は次の通り。  「今回の放送は、トランプ前大統領の4年間をみると、人権問題に深くコミットしてこなかったのではないか、という趣旨を述べたものです。視聴者の方々からは、日常的に様々なご意見をいただいておりますが、詳細につきましてはお答えは控えさせていただきます」  まったく答えになっていない。「池上発言」は、虚偽の疑いが濃厚であり、同時に、虚偽報道を禁じる「放送法第4条」に違反している可能性もある。引き続き、池上氏とテレビ朝日の責任を追及して参りたく思っている。  ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

https://news.yahoo.co.jp/articles/6697d41aa63d5b7fa6cada3822fdb261b9fcb60b

夕刊フジ

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