<現金・預金をこよなく愛する日本人だが、コロナ禍で加速するその習性が今後は自らの首を絞めることに>

日本の家計が保有する金融資産が2000兆円に迫る水準となっている。とりわけ目立つのが現金保有で、いわゆるタンス預金の増加が顕著だ。特別定額給付金や外出自粛、将来不安などが原因だが、こうした国民の行動はアメリカとは逆のようだ。 【画像】深センのロボット風俗店Ai Ai LI の内部 日銀が2021年3月17日に発表した資金循環統計によると、2020年12月末時点における家計の金融資産は、1948兆円と過去最高額となった。政府が1人10万円の特別定額給付金を支給したことに加え、外出自粛などで支出が減ったことから現金・預金は1056兆円と前年同月比で4.8%も増えた。特に現金を自宅に保管する、いわゆるタンス預金の金額は100兆円を超えている。 コロナ危機は非常事態なので、まとまった金額の現金を手元に置いておくことには一定の合理性がある。だが、日本の場合、諸外国と比較して以前からタンス預金の比率が極めて高いという特徴があり、しかも流通している現金の中で1万円札が占める割合が圧倒的に高い。 店舗などで決済サービスが一時的に使えなくなるといった事態に対応するための現金保有ではなく、資産保全を目的に現金を保有している人が多いことが推察されるのだ。 ■インフレはすぐそこに? つまり経済の先行きに対する漠然とした不安から現金を保有していることになるが、こうした経済行動は、量的緩和策が実施されている現状においては大きなリスクとなり得る。量的緩和策は十分な効果を発揮したとは言えないが、一方で市中銀行が日銀に預ける当座預金には約500兆円ものマネーが積み上がっており、一部でも市中に出回れば大きなインフレ圧力となる。 これまでは全世界的にデフレ傾向が顕著だったことから過度にインフレを心配する必要はなかったが、コロナ危機をきっかけに状況は一変した。全世界的なサプライチェーンの縮小で輸送コストが上昇するなか、コロナ後の景気回復を見据えて資材の争奪戦となっており、コモディティ価格が急騰している。 資材価格の高騰にカネ余りが加われば、当然、インフレのリスクが高くなる。10年物米国債の利回りも急上昇しており、世界の金融市場は完全にインフレ警戒モードに入った。

高度成長期にも現金主義だった日本

一方、米政府は今回のコロナ危機に際して、国民1人当たり最大3200ドルの給付金を支給しているが、このうち約4割が株式投資に向かっているとの見方もある。 コロナ危機による影響が人によって違うのはアメリカも日本も同じであり、直接、生活が脅かされていない世帯の場合、給付金が消費に回らないことは以前から予想されていた。だが日本の場合、その多くが現預金として保有され、アメリカでは投資に回っている。 現在のインフレ懸念が本物だった場合、物価が上昇した分、現金を保有している人は損失を抱えることになる。 日本は経済成長率が高かった昭和の時代においても、現金を保有する傾向が強く、インフレの進展によって家計の貯蓄は大きな損失を被っていた。だが当時は賃金が毎年のように上がっていたので、一部の国民は損したことに気付かず、現金保有を続けてきた。 今後の日本経済において継続して賃金が上昇する可能性は低く、インフレによる家計への影響は大きくならざるを得ない。これからの人生設計において、何らかの資産運用は必須となるだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/baf6394af237be5cbd7d274f96770287f36893f1?page=2

ニューズウィーク日本版


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