そのうだるように暑い日、ミャンマー南部の都市モーラミャインに暮らすソー・ウーは、慣れた手つきで山刀を振り下ろし、ココナッツを割っていた。

割れたココナッツに、10歳の娘エー・ミャ・トゥの小さな手が伸びてくる。彼女は冷たく甘い一切れをつかんで、うれしそうに家のほうへ走っていった。 ところが、家の前に差しかかった瞬間だった。エー・ミャ・トゥは何かにつまずいたように突然よろめき、うつ伏せに倒れた。手からはココナッツの一切れがこぼれ落ち、辺りは血に染まっていく。 父親はすぐに娘のもとに駆け寄り、「大丈夫だよ、ココナッツはまだたくさんあるから」と声をかけた。彼は娘を両手で抱き上げたが、腕の中の彼女はぐったりしたままだ。 それでも父はわからなかった。その血はどこから流れ出ているのか? なぜ娘は何も言葉を発しないのか? 銃弾は、エー・ミャ・トゥの左のこめかみに命中していた。 3月27日の午後5時半、ちょうど陽の光が柔らかくなってきた頃だった。それから1時間もしないうちに暗くなり、エー・ミャ・トゥは闇の中で息を引き取った。

復讐はできないけれど

監視団体によれば、2月1日の軍事クーデター以降、ミャンマー国軍による弾圧の死者数は540人を超えたとされる。本紙「ニューヨーク・タイムズ」の調べでは、犠牲者のうち18歳以下の子供は少なくとも40人に上っている。 子供たちの多くは、普段通りの生活を送っているときに殺されている。外で遊んでいたり家族と一緒にいるときに突然、命を奪われているのだ。 「うちの娘を殺した兵士に復讐する力は私にはありません」と、エー・ミャ・トゥの母親は言う。 「私にできるのは、彼らがあの世へ行く順番が1日でも早く訪れるようにと祈ることです」

https://news.yahoo.co.jp/articles/3d1728a9ed7b407c67c0069c05e2086720ed7030

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