日米「2プラス2」で反発する中国、菅首相訪米に高い関心

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中国の王毅国務委員兼外相は4月5日、茂木外相との電話会談でこう発言した。電話会談は中国側の呼びかけによるものだったという。 茂木外相は沖縄県尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入、香港や新疆ウイグル自治区の人権問題などについて深刻な懸念を伝え、具体的な行動を求めた。 王外相は、「日本側が香港や新疆ウイグル自治区などに関する中国の内政に介入することに反対する」とし、日本の要求は内政干渉とはねつけた。一方、日中関係については、「ようやく迎えた改善と発展の大局を大切にし、維持すべきであり、いわゆる大国間の対抗に巻き込まないことを確保すべきだ」と述べ、日本が米中対立に関わらないよう求めた。また、「中国に偏見を持つ国のリズムに乗せられないよう希望する」と、暗にアメリカに同調しないよう釘を刺した。 日中の関係者からは、「菅首相の訪米を前に言うべきことは言っておくというけん制ではないか」という見方が出ている。日本政府はアメリカ・ワシントンで現地時間16日、菅首相とバイデン大統領による初の対面での首脳会談を行うと発表した。これまでに私が取材で面会した中国当局の関係者らの多くが、菅首相の訪米について熱心に尋ねるのを見ても、関心の高さがうかがえる。 きっかけとなったとみられるのが、日米の「2プラス2」(外務・防衛閣僚会議)だ。発表された共同文書では名指しで中国に言及し、中国の海洋進出などに懸念を表明した。 これに対し、中国外務省は日米両政府に「内政干渉だ」と抗議したことを明らかにした。さらに、「中国の発展を阻止したいというエゴを満足させるため、人の顔色をうかがい、アメリカの戦略的属国になっている」と日本を強く非難した。 その後も日中の防衛会合で国防省が日本を非難するなど、中国側は反発を強めている。それでは中国側は日本との関係悪化を望んでいるのか。

「日米には同盟関係があるが、日中も平和友好条約を結んでいる。日本は条約を履行する義務がある」

日本に対米警戒を呼びかける中国メディア

「日本は警戒を怠ってはならない。米国はただでは守ってくれないだろう。そのために日本は『高額な勘定』をすることになる」 これは中国国営メディアの1つ、中国国際放送局(CRI)がインターネット上に掲載した評論記事の一部だ。日米の「2プラス2」を受けて3月18日に掲載された。 中国国営メディアは中国共産党や政府の「喉と舌」とも言われ、当局の方針を宣伝したり、世論を誘導する役割も担っている。記事は日本語で書かれていて、日本向けに中国側の立場や主張を宣伝する狙いがあるとみられる。 記事は、「隣国である日本は、地域経済の一体化と中国との経済貿易協力から大きな利益を得ている。米国による中国封じ込め戦略の手先となるなら、経済面で莫大な代償を支払うことになるだろう」と日本に警告を発した。その上で、「米国の新政権は同盟国との『共通の価値観』などといった決まり文句をよく使うが、最優先に確保するのは間違いなく米国ファーストの利益だ」と指摘している。同盟国として中国抑止で歩調を合わせる日米両国に、少しでもくさびを打ち込みたいという思惑も透けて見える。 中国共産党系メディアの関係者は、「習近平指導部は、対立するアメリカをけん制する意味でも日本との関係は改善していきたいと考えている」との見方を示す。また、別の関係者は、「中国側の対日関係改善というスタンスは当面変わらないだろう」と指摘。その理由としてある会談に関する中国での報道ぶりを挙げた。

緊張もはらむ日中関係、報道ぶりでわかる?中国側の本音

関係者が指摘したのは、垂駐中国大使と中国共産党でトップ25にあたる政治局委員との会談だ。 垂大使は3月18日から3日間の日程で、着任後初めての地方出張として、天津市を訪問。周恩来元首相の母校である大学を訪れて講演し、日中関係の重要性を強調すると共に、学生に写真をプレゼントするなど、現場は和気藹々のムードに包まれていた。 しかし、その後、政治局委員であり、天津市トップの李鴻忠書記との会談では、李書記から日米の「2プラス2」を強く非難する発言が飛び出したのである。 「我々の香港、新疆、台湾の関連することに干渉することはよい方向に向かっている中国と日本の関係にとって深刻な破壊である」 北京にある日本大使館関係者は、「2プラス2の直後だったので話題に出るかもしれないと思っていたが、まさかカメラで撮影している会談の冒頭で出るとは思わなかった」と話す。一方、中国側の関係者は、「李書記は上層部と相談した上で発言したのだろう。これは日本への警告だ」との見方を示した。 垂大使は天津市に続き、その2日後には新型コロナウイルスの感染が最初に拡大した湖北省武漢市も訪問した。現地では応勇湖北省書記と会談し、武漢封鎖当時のチャーター便による日本人帰国に関する協力について謝意などを伝えた。湖北省の地元テレビ局はこの会談について、「経済貿易の往来を強化し、多くの領域での実務的な協力を深めていく」と好意的に報じた。一方、書記が日本非難に言及した天津市の訪問は、地元メディアも含め一切報道が見つからないのである。 中国では国内メディアの報道は当局の方針により事実上統制されている。ではなぜ、報道対応が分かれたのだろうか。FNNの取材では垂大使の湖北省訪問について、日本側が事前に中国側に対し、天津市でのような日本非難は控えるように求めたことが判明している。 日中の関係者からは「中央から統一指令が出ていたわけではないのではないか」という見方や、「アメリカと歩調を合わせる日本に対して釘を刺すものの、日本との友好ムードを完全には壊したくないという配慮が働いたのではないか」と見る向きもある。 中国側としては、香港や新疆ウイグル自治区での人権問題などで、アメリカやヨーロッパなどと対立が深まる中、日本をできる限り中国につなぎ止めておきたいと考えているようだ。 垂大使は1月、FNNのインタビューで日中関係について、「極めて脆弱な関係にあり、いつでも何か物事、事件、事故が起きればすぐに大きな影響を及ぼしかねない関係」と指摘。安定した関係を構築する必要性を訴えた。 米中対立のあおりで緊張もはらむ日中関係、今後は米中の狭間で日本が難しい選択を迫られる可能性もある。まずは16日の日米首脳会談が試金石となりそうだ。 【執筆:FNN北京支局 木村大久】

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